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「小夜さん、
ちょっと定時連絡しますね。」
駅のホームへの階段を登りきった時、
九条さんが言ってきた。
私はちょっとふざけて、
「了解~!」
って敬礼して言った。
九条さんはニコッと微笑んで、
敬礼して返してくれた。
何かに気付いたのか、
急に険しい表情になり、
「コラ~!バックス~!」
と言いながら私の後ろに行く。
振り返ると・・・、
刺木さんがフラフラしてた。
無理も無い・・・、
寝てないんだもんね。
「ん・・・、おお。」
「だから言ったじゃないですか~!」
「大丈夫、大丈夫、寝てねえだろ。」
「モ~!しっかりして下さい!
定時連絡してくるんで、
小夜さんお願いしますよ。」
「解った、解った、任せろ。」
「ホントにモ~!」
ブツブツ言いながら、
向こうの方に行く九条さん。
良く見るとなかなか良いコンビだな~。
「フフッ。」
自然に笑いが出た。
「あ~、佐倉さん。」
「はい?」
「ちょっとそこでコーヒー飲むんで。」
刺木さんの指差す先に自販機があった。
「良いですよ。
あんまり無理しないで下さいね。」
「大丈夫、
コーヒー飲めば目も覚めます!」
照れ笑いしながら、
刺木さんは自販機に向かう。
『間もなく~、3番ホームに・・・。』
アナウンスが流れたので、
白線の方に歩いて近づいた。
その時に・・・。
誰かに背中を突き飛ばされた。
突然の事で反応も出来ず、
そのまま線路上に叩きつけられる。
激しい警笛とブレーキ音が近づいてる。
だけど体が動かない。
「小夜っ!」
線路上に飛び降りた刺木さんが、
私の両脇腹を掴み持ち上げる。
「小夜さんっ!」
手を伸ばす九条さんが見えた。
その手を掴むと、
他の乗客達の手が体を掴み、
ホームへ引っ張り上げられる。
その後すぐ私の後ろに、
激しいブレーキ音と共に、
・・・電車が滑り込んで来た。
あれっ?
刺木さんが居ない・・・。
周りを見て姿を探す。
あんなに大きい人なのに見えない。
「タイガーさん・・・。
そんな・・・、
タイガーさん・・・。」
九条さんがへたり込んで居る。
「嫌・・・、
嫌・・・、
嫌ぁー!」
私は絶叫していた。
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