狙う側の流儀

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助手席のドアを開けて、 和郎(かずお)が入ってきた。 「兄貴~、  またスマホゲームっすか?」 買い出ししてきたコンビニの袋から、 アンパンを取り出し、 余計な一言を付け加えて俺に渡す。 「・・・うるさい、  俺の唯一の趣味に、  ケチ付けてる暇が有るんなら、  (おど)しと(ころ)しの違いくらい、  (した)(もん)に教えておけボケ。  『電車が入ってきてから背中押せ。』  って俺はお前に言ったよな?  それがどうして、  『突き飛ばして線路に落とせ。』  になってんだよ?  死んでたら黒手帳が動いて、  めんどくさい事になってたぞ!」 「俺もそう言ったんすけどね~。  どこでどう間違ったのか・・・。」 「殺しちゃ脅しにならんだろ?  脅しはあくまでも、  向こうに脅しだと思わせなきゃダメなんだよ。  それでいて黒手帳が動けん範囲内に納めんだよ。」 「はぁ・・・。」 「解ってねえな・・・。  あ、それよりこの前タゲが会ってた奴。  誰か判ったのか?」 「あの~、タゲって誰っすか?」 「ターゲットだ!  略してタゲだよ!  あの女が一昨日会ってた男の素性(すじょう)だよ!」 「あ~、  ヒロシに尾行(つけ)させたんですけど、  毎朝日報(まいちょうにっぽう)の支局ビルに入ってって、  そこから2時間後に出て来たのを、  尾行(つけ)てたんですが・・・、  見失ったそうです。」 「毎朝の記者か・・・、  新聞にリークしやがったのか?  しかし・・・、  それだと黒手帳呼ばなかった、  理由が判らんな・・・。」 突き飛ばされて線路に落ちたんなら、 立派な殺人未遂だ。 警察が捜査を始める充分な理由になる。 なのに・・・、 警察を呼ばなかった・・・。 最初は蔵武建設を強請(ゆす)るのに、 警察が関わって来ると、 面倒な事になるからだと理解してたが、 新聞に強請(ゆすり)のネタをリークしたら、 蔵武建設からは金を引っ張れなくなる。 例の件のネタなら、 新聞がそこまで金を積んで、 買い取るネタじゃねえはずだし・・・。 それに例の件なら、 誰かを引責辞任させて幕引き、 ・・・って聴いてたんだがな。 「和郎、  とりあえず戸繰の旦那に、  毎朝の記者が嗅ぎ回ってるって、  報告しとけや・・・。  まだ寝てねえだろうし、  写真は送ってあっから電話で良いぞ。」 「はい、  んじゃ今電話してきます。」
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