狙う側の流儀

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和郎が、 助手席から出て行ったのを見て、 俺はゲームを再開した。 そろそろチーバトの時間だし、 考えるのは後だ。 現実の社会じゃ、 他人を傷付ける仕事なのに、 ゲームの世界じゃ、 回復役のヒーラーやってるとは・・・。 何とも皮肉な話だ・・・。 助手席を開けて和郎が乗り込んで来た。 「兄貴~、  行ってきました。」 「ちょっと黙ってろ。」 チーバト・・・、 『チーム対抗バトル』の略だが、 ここは集中しなきゃならんからな。 ちょっとの油断が仲間を死なせる。 「兄貴~。」 「ちょっと黙ってろ、  って言ったよな。」 「集めんの6人で良かったっすよね。」 「あ~っ、  死なせちまったじゃねえか!  クソッ!  そうだよ、ピッキング班3人、  撮影班3人っつったろ~が!」 「何時頃(なんじごろ)に呼びます?」 「予定は1時開始だから、  15分前には呼んどけ。」 何とかチーバトに勝利する事は出来た。 『皆お疲れ様~!また明日ね~!』 そうコメント入れて送信し、 俺はゲームからログアウトした。 「今部屋に居んのは、  タゲと刺木って奴だけなんだろ?」 「はい、  他の3人はいつも通り19時に帰りました。」 「3人居ても刺木ってのには勝てねえのか?」 「有鐘(あるがね)最終兵器(さいしゅうへいき)って呼ばれてましたからね。  ・・・無理っす。  『(こわ)()源治(げんじ)』  って呼ばれてた兄貴なら勝てるかも?」 「その名前出すんじゃねえよ。」 「スンマセン。」 「作戦は、  1時にピッキング班が玄関開けて侵入。  タゲと刺木は、  ベッドで一緒に寝てんだろうから、  起きてこなきゃ撮影班入れて写真撮れ。  起きてきたら、  ピッキング班は逃走。  それを刺木が追って行くのを確認して、  撮影班が侵入してタゲの写真撮れ。  ・・・簡単だろ?」 「写真撮るだけっすか?」 「そうだ。  これは脅しだからな、  何時(いつ)でも殺せるって、  思わせるのが重要なんだよ。  覚えとけよ。」 「解りました。」 「んじゃ実行班に指示出しとけ。  終わったら起こせ。」 俺はシートを倒して寝る体勢に入った。
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