緊急幹部会議(後編)

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折角(せっかく)、見つかった・・・。 小夜さんの希望を・・・。 消してしまう事になるかもしれない。 でも・・・、 このまま黙っていてはいけない。 その事実が露呈(ろてい)した時、 さらに小夜さんが打ちのめされる事になる。 「守屋・・・、  一つ良いかな?」 「何だ?」 「この再現VTR・・・、  裁判には証拠として、  ・・・使えないよ。」 「誰が裁判に使うと言った?」 「えっ・・・、  じゃあ何に使うの?」 「乗客に船から降りてもらわんとな。」 「乗客?  ・・・何よそれ?」 「乗客に船は沈むと教えてやれば、  乗客は命からがら逃げ出す。  船に残るのは船長のみだ。」 「そう言う例え的な言い方止めて!」 「なかなか上手い例えなんだがな・・・。  再現VTRは、  事情を知らぬ者にとって、  戸繰が近い将来逮捕される事を、  暗示する物となる。  戸繰が逮捕されれば、  社長の職を解任されるのは必定(ひつじょう)。  多田野と利杉にとっては、  戸繰の為に嘘のアリバイ証言をする、  メリットは無くなる。  さらにデメリットとして、  嘘の証言を続ける事により、  自分まで逮捕されてしまう事になる。  それを推測させればアリバイ証言を撤回し、  犯行時刻に戸繰は居なかった・・・、  と真実を語ってくれるだろう。」 「あ、そうか!  犯人隠避罪(はんにんいんぴざい)で逮捕されたら、  自分まで社長辞めさせられる事になる。  沈む船の船長が戸繰で、  乗客が多田野と利杉って訳か。  それじゃ船長見捨てて逃げるわね。」 「多田野と利杉に真実の証言をさせ、  それをボイスレコーダーに録音し、  戸繰にそれを聴かせた後、  再現VTRを観せる、  その後に問うのだ。  『再現VTRをいくらで買うのか?』  と言う風にな。」 「なるほど!  戸繰に再現VTRを高値で買い取らせる!  そのお金を小夜さんの慰謝料にするのね!」 私の発言を聴いた守屋は、 少し前屈みになり左手を腰に当てた。 私は反射的に言う。 「次それやったら殴るって言ったろ~!」
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