決着・・・?

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「に、偽物・・・、だと?」 「はい。  確かに良く出来てます。  室内も完璧に再現されてますし、  映っているのも、  佐倉さんと社長に見えます。  ですが・・・。」 チンピラと佐倉は驚いたように、 目を見開いて宝陽を見ている。 浅目はソファーに腰掛けて、 目を閉じて聴いている。 「この構図ですと、  この鉢植えから撮っている事になります。  しかし・・・、  この鉢植えは19日にここに置いた物です。  私が清掃業者に指示したので、  間違い有りません。  この動画の日付、  つまり18日にはここに無かったのです。  ですからこの動画を撮れるはずが無いのです。」 「流石は敏腕秘書(びんわんひしょ)だ・・・。  確かにその動画は、  画像処理を(ほどこ)して作り上げた偽物だ。  だが・・・、  部屋に入って来るのが遅かったな。」 「遅い・・・?  それはどうかしら?  この動画を社長に、  高値で売るつもりだったんでしょうけど、  貴方達(あなたたち)はまだお金を手にしてないのよ。  偽物である事が判明した以上、  この動画は無価値よ。  ・・・残念ね。」 「確かにその動画の価値は、  今となってはゼロだ。  最初から聡明(そうめい)貴女(あなた)が相手だったら、  勝負はどっちに転んでいたか判らなかった。  ・・・この点は神、  ・・・いや悪魔に感謝せねばならんな。」 「何それお世辞のつもりかしら?」 「俺は言ったはずだ、  遅かったとな・・・。」 浅目はそう言って、 ポケットからスマホを取り出し、 操作した。 『5月18日の午後19時10分頃。  この社長室で、   戸繰社長が佐倉小夜に対して行った、  強制性交が事実である事を証明する動画を、  戸繰社長・・・、  貴方(あなた)はいくらで買いますか?』 『よ、400・・・、  いや、500万円で買おう!  俺に売ってくれ!』 先程の会話がそのスマホから流れた時、 宝陽は愕然とした顔をした。 「あっ・・・。」 「俺が欲しかったのは、  この戸繰の言葉だからな。  戸繰の犯行を裏付ける動画を、  500万もの大金で買い取る。  その理由は、  証拠の揉み消し以外には有り得ない。  戸繰のこの発言こそが、  罪の自白に相違無いものだ。  これ以上の説明は、  聡明な貴女には必要有るまい。」 浅目の言葉を聴いた宝陽は、 タブレットを床に落としてしまった。
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