守屋の師匠

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先輩が謎の美女にそう言うと、 その人は黙って座った。 「コーヒー入れて来るね~。」 摩子が立ち上がり台所へ向かう。 「あの~、自殺しようとしてたって、  ・・・本当ですか?」 私はとりあえずそう話しかけてみた。 しかし謎の美女は、 無表情のまま黙っている。 リビングを沈黙が包む・・・。 き・・・、気不味い・・・。 台所からの、 ガチャガチャとか、 時々混じるガターンとかの音が、 リビングに響くのみだ。 「お待たせ~、  摩子ちゃん特製カフェオレだよ~!」 摩子がコーヒーカップを御盆に乗せて現れた。 「は~い、どうぞ~!」 先ずは御客様の謎の美女の前にカップを置いた。 続いて先輩、次に私の前にもカップを置く。 そして摩子が座って真っ先にカフェオレを飲み。 「は~、美味しい~。」 と満面の笑みだ。 謎の美女は静かにカップを手に取り口元に運ぶ。 次の瞬間。 「ぶふぉっ!かはっ、かはっ、何コレ!」 目を白黒させ、()せながら叫ぶ! 私も確認する意味でカフェオレを少し口に入れた。 「うあっ!  甘過ぎだよ摩子~!何入れたの?」 無茶苦茶甘いカフェオレ! 「えとね~、  角砂糖五個と隠し味にガムシロップ一個入れたよ。」 「入れ過ぎ!それに隠し味じゃ無いからガムシロは!」 「え~、これくらい普通だよ~。」 「いやいや、こんなの毎日飲んでたら糖尿になるよ!」 「大丈夫、大丈夫、若いから。」 「そう言う問題じゃないから!」 「うふふふふ。」 あっ、謎の美女が笑った。 「あはははっ、あ~、馬鹿らし~。  私にも、あなた達みたいな時期あったな~。」 謎の美女は先程とは打って変わって、 明るい表情でそう言った。 「やっと笑ってくれた~!  疲れた時は甘い物が良いんだって~、  元気出るから~。  お婆ちゃんが何時(いつ)も言ってるよ~。」 「ありがと~、おかげで元気出たよ~。」 謎の美女はそう言って摩子の頭を撫でていた。 「あ、私は佐倉小夜(さくらさよ)、  よろしくね~。」 ここで謎の美女の名前が判明した。 「佐倉さん、自殺しようとしてたって本当ですか?」 先輩がそう尋ねると、 「あ、違う違う!  それはあの人の勘違いよ!」 小夜さんはあっさりと否定する。
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