最終決戦!・・・それぞれの闘い

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「ぐっ・・・、ぐうっ!」 うめき声を上げながらも、 奴は上体を起こそうとしている。 コイツ・・・、 まだ立てるのか! 奴は必死に立ち上がろうとしていた。 俺は思った。 どっちも化け物だ・・・、と。 「()めなさい、望月(もちづき)!  下がりなさい!」 女の声がした。 振り返って見ると、 敏腕秘書宝陽と、 その後ろに九条が居た。 九条の姿が見えなくなったと思ってはいたが、 どうやら宝陽を呼びに行ってたようだ。 「しかし・・・、お嬢さん。」 立ち上がってそう答える望月に、 「下がりなさい望月。  これは御前(こぜん)御意志(ごいし)では有りません!」 そう良い放つ宝陽。 「えっ?例の件じゃ・・・、  クソッ!あの狸がぁっ!」 忌々(いまいま)しげに悪態(あくたい)をついた後、 「おい、和郎!全員撤収させろ!」 と望月は指示を出す。 「全員撤収だ!撤収!」 一人の男が声を上げる。 多分、奴が和郎なのだろう。 宝陽がさらに付け加えて言う。 「後、この方達への報復等も、  許しません。  良いですね、望月。」 「はい、解っております。」 「壊し屋源治が壊されてボロボロね。」 「化け物相手でしたからね。」 右手首を押さえながらそう返す望月。 「あなたには御前から、  (ねぎら)いが有りますから、  今日は帰りなさい。」 宝陽は優しく微笑んで言った。 「はい、お嬢さん。  今日は帰らせて頂きます。」 望月はそう言って帰ろうとしたが、 何かを思い出したように、 佐倉さんの方を向いて、 「どうも、色々と怖がらせて、  スミマセンでした。」 と頭を下げて詫びを入れた。 「あ、後、刺木さん。  アンタとは二度と()りたかねえです。」 と付け加えてニヤリとした。 「俺もアンタとは二度とゴメンだ。」 そう返して師匠もニヤリと笑う。 望月はそれを聞いて、 折れているであろう右手をポケットに入れ、 左手を挙げた後に、 入り口に向かって歩いて行く。 俺達は黙ってその背中を見送っていた。
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