騎士の心得

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守屋はそう言ってソファーに戻り、 中古車雑誌を眺め始めた。 「守屋、車買うの?」 「ああ、  前から自分のが欲しかったからな。」 「車か・・・、  私も買っちゃおうかな?」 「先輩も車欲しいんですか?」 「うん、毎回鏡司君に、  送ってもらうのも悪いしね~。」 「まぁ、お前達の帰りを送るのは、  例の殺人事件が解決するまでだから、  そんなに気にする事は無い。  今回の報酬は二百万円もあるからな、  一人頭四十・・・。」 「鏡司君、喜んでるところ悪いんだけど、  これ、  今回の再現VTR作るのに、  掛かった費用の請求書よ。」 守屋が話してる途中に先輩が割り込み、 請求書を守屋に渡す。 「あ、そうだったな。  どれどれ~、意外と高いな。  十五万八千五百ゼロ円か・・・。  ひ、百五十八万五千円だと~!」 「そうよ~。」 「何だよ、このスタジオ代って?  絵画のレンタル料とか・・・、  あの動画って、  エロ動画に画像処理した奴じゃ無いのかよ?」 「そんな都合良いエロ動画なんて無いわよ!  そんなの探すより、  一から作った方が早いわ。」 「この出演料の欄の佐武(さたけ)敦彦(あつひこ)って、  テレビに出てるあの俳優か?」 「あの名脇役の?」 「最初に戸繰見た時に、  似てるって思ったのよ~。」 「たかが再現VTRに、  本物使ってんじゃねえ~!」 「背も同じくらいだったし、  すんごい良い人でさ~!  小夜さんに演技指導とかもしてくれて、  私にも色々と教えてくれたりしてさ~。  ホントに充実した撮影だったわ~!」 「無駄に完成度高過ぎだろ~!」 「小夜さんが出演してくれたおかげで、  加工処理する所も少なくて済んだし、  ホントに助かったわ~!」 「お前金持ちなんだからその分払え!」 「あ、何か言った?何か言った?  今、何か言ったか?」 「あ・・・、  いや・・・、  何でも無い・・・。」 「どっかの誰かさんに言わせると、  私は胸がデカイだけのバカ女らしいから、  ちゃんと言質(げんち)は録ってあるわよ。」 そう言ってスマホを取り出す先輩。 『費用・・・、かなり掛かるわよ。』 『大丈夫だ・・・、  金に糸目は付けんぞ。』 スマホからその声が流れてきた時。 守屋は両膝から崩れ落ちた。 「車買おうと思ってたのに、  車買おうと思ってたのに、  車買おうと・・・。」 うわ言のようにそう繰り返す。
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