受難・・・そして絶望

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小夜さんは軽くそう言って、 小夜さんの告白に戸惑(とまど)っている、 私達に向けてさらに言葉を続けた。 「あの日さぁ~、  派遣期間終了後について話が有るから、  業務終了後の午後7時に社長室に来いって、  社長から指示が有ったのよ。  人事部じゃなくて社長直々の呼び出しだからさ、  次からは正社員採用にするとかかな~?  とか色々と妄想を膨らませて行った訳よ~。」 私達に気を使ってるからなのか、 小夜さんは、 過去のドジ話でも話してるかのように話し続ける。 「そしたらさ~、  『正社員になりたかったら愛人になれ!』  とか言って来たから頭きてさ~!  『人事部に言いつける!』  って言って帰ろうとしたら・・・、  襲われちゃった。」 小夜さんは舌を出しておどけて見せる。 しかしそれが私には痛々しく見える。 「け、警察には行ったんですか?」 たまらず小夜さんに尋ねた。 「行ったよ~、次の日に。  ここで忠告ね~!  そう言う被害に()ったら()ぐに、  最寄(もよ)りの警察に駆け込むのよ!  私みたいに家に帰ってシャワー浴びて、  次の日の朝、  (やぶ)けた制服とかゴミに出したりしてから、  行っちゃダメだからね~!  何かね、  そう言うの物的証拠になるんだって~。」 そんな被害に遭ったとしたら、 気が動転してまともな行動が出来ないのも、 理解出来る・・・。 「まさか・・・、  物的証拠が無いからって・・・、  警察は捜査しなかったんですか?」 「してくれたんだけどね~。  その日・・・、  あ、5月18日ね、  その日の午後6時から、  社長は料亭で会食してたんだってさ。  料亭で下請(したう)け会社の社長二人と。」 「襲われたのは何時(なんじ)です?」 「午後7時に社長室来いって言われてたから、  午後7時10分くらいね。  ちなみにその料亭は会社から30分かかるわ。」 「そんなの・・・、  途中で抜け出して来たに決まってますよ!」 「ところが他の社長達に聞いたら、  トイレで5分くらい席外した事は有るけど、  後はずっと居たんだって証言してるんだってさ。」 「そんなの口裏合(くちうらあ)わせてるんですよ!」 「私もね~、  警察にそう言ったんだけど、  物的証拠が無いから、  これ以上捜査出来ないって言われたのよ~。」
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