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「こら。また僕の書斎に入ったな? ……おもしろいかい?」
読書の邪魔をしないように、僕はこっそり近づき、女の子の隣に太めのからだをすり入れた。彼女は身じろぎひとつせず、ノートに顔をくっつけたまま面倒くさそうに応えた。「ふつう」
「そうかあ」僕は苦笑した。
「でもね、気になるんだ。天使のリィリアはどうなっちゃうの? ここに『つづく』ってあるよ。ねえ、パパ、わたし読みたい」
……そうだ。僕は大切なことを忘れていた。誰かに読んでほしいから、書くのだ。
ひとりでも、僕の物語を読んでくれる人がいるのなら。僕はあなたのために、書き続けよう。
「……リィリアはね、仲間の天使たちに助けられるんだよ」
「ほんと? それから?」
ノートを受け取った僕は、途切れていたページを開く。娘は僕の膝に座り、嬉しそうに笑っていた。
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