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まるで診察室のような外観。
山積みにされた本。
医療用のベッド。
誰だか分からない、たくさんの古い人物写真が詳細なメモと共に部屋の隅々に貼りめぐらされていた。
精神科医だった祖父が過去、この地下室で密かに研究でもしていたのかもしれない。
なんのために??
診察室の奥には机があり、そこに数十枚束ねた原稿用紙が置いてあった。
蒼葉は拾い上げ、そこに記載された文章を読みあげる
ー精神が与える身体への影響
キムラ派サタニズムを基礎とした催眠療法の可能性について
兄と、愛する恋人に捧ぐ。
園田清雅ー
「祖父の名前じゃない。。」
ふと傍に置いてあった写真に目をうつすと、若い頃の祖父と、その横に祖父によく似た暗い面持ちの青年が立っていた。
一度も話にきいたことはないが、祖父には弟がいたようだった。
蒼葉はページをめくり序文を読む
ーサタニズムとは、悪魔主義の事である。悪魔を崇拝する怪しい宗教などではない。
悪魔主義とは、人間が持つ欲望を肯定する精神の事である。
中でもキムラ派サタニズムは最も過激に発展を遂げた。
この精神性の持ち主は、内在する欲望を肯定するのみならず、それを解放し必ず実現させようとする。
自己中心的ともいえるこの精神性は、精神医療に応用でき、
鬱病の患者を治し、社会復帰を可能にするだけでなく、その後患者は起業家となって成功した例も存在する。
さらに驚くべきことに欲望は解放されると、脳の中枢に影響を与え、人類の眠れる力を呼び覚ます。
数百キロ離れた人を目視することや、人の心を自在に操ることも可能になる。ー
蒼葉は思わず笑ってしまった。
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