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その横で、
「早く入れよ蒼葉!」と、校内じゃ渡邊花帆と一言も交わさないような男子生徒が興奮して青葉を引きよせる。
みなセックスの予感を楽しんでいるような、異様な雰囲気だった。蒼葉はあからさまに嫌悪感で身を固くしながら、その場に座った。
「聞きたかったんだけどさ、何でずっと学校来なかったんだよ」
男子生徒は蒼葉の前で渡辺花帆の持っていた缶ビールを飲みながら彼女の太腿に手を置いた。
渡辺花帆は太腿でその手を挟み込み、男の腕に自身の腕を絡ませる。
蒼葉の記憶が甦る。半年以上前、まだ田中由莉奈と付き合っていたと頃だ。蒼葉はトイレの個室から、男子生徒が話す声に耳をすましている。
「昨日あずさとヤッたんだ」
「バカ、個室誰かいるぞ。教師だったら退学だぞ」
「コレね、コレ」
男子構成はジェスチャーをつくる。
「正直うちのクラスで一番イイの、田中だろ」
「俺もそう思った!」
「最近映画行ったんだよ実は。あいつ映画の間何してきたと思う?」
男子生徒は自分の指を口に咥えた。
個室の中で蒼葉の手の平は汗でじっとりと湿っていた。
女生徒たちの黄色い悲鳴で蒼葉は現実に引き戻された。
男子生徒が渡邊花帆にキスをしたのだ。
それだけじゃない。服に手を入れ体をまさぐっている。
別の男子生徒が渡邊を引き寄せてキスをする。他の女子生徒達も加わり、全員で息荒く交わりだした。
キスが蒼葉にも回ってきた。女子生徒に顔を引き寄せられ、蒼葉は反射的にばっとよけてしまった。
蒼葉は部屋を飛び出した。
田中由莉奈が同じように男子生徒達とキスをしているのが容易に想像できた。胸がつかえるような息苦しさを感じトイレへかけこむと、喉に指を突っ込んで吐こうとしたが、咳と涙が出るだけだった。
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