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渡邊花帆の家には広い庭があった。蒼葉は一人庭でウーロン茶を飲んでいると、
「あ~また一人でいるんだ」
と厚かましい声が聞こえる。阿部愛里紗だ。
「飲んでみなよ!」
と阿部が蒼葉に氷結を渡す。
「蒼葉くん、由莉奈ちゃんと付き合ってたでしょ?」
「何で知ってるの?」
自分でもびっくりするような大声が出た。
「仲良かったからちょっとだけ話きいてたよ。蒼葉くんは、絶対しようとしないって」
またセックスかとうんざりした。
「蒼葉くんらしいね...一途で羨ましいなあ....」
阿部は蒼葉にやけに近づいたかと思うと、身を寄せてするりとに腰に手を回してきた。「今日相手まだいないんでしょ?ゴム、リビングにあるから持って行こうよ」
数秒沈黙したが、
「もう、帰るね」
蒼葉はたえ切れず歩き出した。
「え、うそ??なんで??」
「仲良かったんでしょ???なんでそんな事平気でするの??」
蒼葉は怒っていた。自分でもなぜ怒っているのか分からなかったが怒りたくてたまらなかった。
「今付き合ってないんじゃないの?それに由莉奈ちゃんだってやってるの知ってるでしょ」
蒼葉は泣き出しそうだった。何も言わず玄関に向かう。
「由莉奈ちゃん、離れていったのわかるかも」
その言葉に蒼葉はびたりと止まった。
「純粋なのもいいけどさァ、お酒くらい飲んだら??つまんなくない??」
暫く固まっていた蒼葉だったが、おもむろに、氷結のフタをあけると思い切り口の中に
流しこんだ。
アルコールが、ダイレクトに脳みそに流れこんでいくのが分かった。
「飲んだ事あるの!?」
一気に飲み干し、缶を地面に投げ捨て、蒼葉は阿部を見た。蒼葉の白い顔は月明かりに照らされ、青白く、怪しく光っていた。
「初めてだよ」
蒼葉は阿部にかけよって、その顔を強引に抱えこむと唇に激しくキスをした。
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