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蒼葉は薄暗い部屋に一人になった。
照明をつけ、姿見の前に立ち、衣類をすべて脱ぎ捨てる。四体が鏡の前であらわになった。
蒼葉はその姿を見ているうち、言いようも得ない恐怖がわき上がってくるのを感じた。まじまじと自分の身体を確認する蒼葉。
「白い肌…筋肉のつかない身体…細い骨…。長いまつ毛…不能の性器…。人形のような、意思を持たない人間…。…人間として不完全だ…。出来損ないの人間だ…」
息がつまる。
蒼葉は引き出しにしまっていた写真をとり出す。
田中由莉奈がうつっている。
「でも…君を想う気持ちだけは完璧だ。ずっとずっと、死ぬまで、死んでも、永遠に君が大好きだ…」
蒼葉の目から、あふれんばかりの涙がこぼれおちて行った。
蒼葉は写真にキスをし、二人が付き合っていた頃、キスをした様々なシーンを思い浮かべた。
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