第一話 不完全な天使

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蒼葉は薄暗い部屋に一人になった。 照明をつけ、姿見の前に立ち、衣類をすべて脱ぎ捨てる。四体が鏡の前であらわになった。 蒼葉はその姿を見ているうち、言いようも得ない恐怖がわき上がってくるのを感じた。まじまじと自分の身体を確認する蒼葉。 「白い肌…筋肉のつかない身体…細い骨…。長いまつ毛…不能の性器…。人形のような、意思を持たない人間…。…人間として不完全だ…。出来損ないの人間だ…」 息がつまる。 蒼葉は引き出しにしまっていた写真をとり出す。 田中由莉奈がうつっている。 「でも…君を想う気持ちだけは完璧だ。ずっとずっと、死ぬまで、死んでも、永遠に君が大好きだ…」 蒼葉の目から、あふれんばかりの涙がこぼれおちて行った。 蒼葉は写真にキスをし、二人が付き合っていた頃、キスをした様々なシーンを思い浮かべた。
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