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「隠し子……?何のことだ?」
鈍く光るその瞳を見れば、翔はにこやかに笑った。
「知らないんですか?先生の子どもだと名乗る男性が現れたんですよ。しかも、それを証明するために先生の上の娘さんがDNAを提供してくれたそうなんですよ」
例え名前を出さなくて、ここまで言えば紗代の事だと分かってしまうだろう。ネットで検索すれば何でも出てくる世の中だ。父親を追い込むための作戦だとしても、紗代だってただじゃ済まない。
「先生、ご自身に息子さんがいた事、ご存知でしたか?」
翔が質問すると、磯島は顔をしかめてカメラを睨んでいるようにも見えた。
「ダメですよ。コレ、テレビですから。全部放送されてますよ?」
また翔がそう言うと、磯島は席を立ち、カメラに背を向け、翔の方を振り返った。
「キミは自分の立場が分かっていないようだね。こんな嘘の情報をテレビで流して……。キミはもうこの業界では生きていけないだろうな」
くぐもった声がそう言い放つと、磯島は不機嫌な表情で店を出て行ってしまった。
「いったんスタジオにお返ししまーす!」と、女性アナウンサーが叫び、強制的に遮断された中継の後、スタジオではフォローするようにいろんなコメントが飛び交っていた。
「野本さんの弟さん…芸能界干されるんじゃないですか?」
俊介が訊くと、彩香は首を横に振って微笑んだ。
「彼は役者向きかもしれませんね」
この問題が解決したら、どうやら翔はローカルにとどまることなく全国区で活躍するようだ。
彼女の予言は当たるのだろう……。
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