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神藤の家でテレビを見ていた円華と英彦、優衣香は、スタジオのアナウンサーが慌てふためく様子を見て口を閉ざしてしまった。
これがどれほど大きな問題か、なんとなく分かっている。
ジャーナリストでもない、報道番組でもない地方のテレビ番組で、市議会議員の秘密を暴露し、追究しようとした。ただのローカルタレントが。
これから磯島の犯罪が公になるまで、彼らは何らかの処分を受けるだろうし、野本の弟に関しては芸能界を干されるかもしれない。
「大丈夫かしらねぇ」
登季子さんがお盆にコーヒーを乗せてやってくると、それをひとつずつテーブルの上に並べていく。
「まあ、彩香さんの事だから、手は打ってあるんでしょうけど」
その言葉を聞けば少しだけホッとするが、内心はやはり気が気じゃない。
自分たちの問題に関係ない人たちを巻き込んでしまったと思うと、胸が痛い。
ふと、円華が不安そうに座っている優衣香に手を伸ばすと、その身体を抱き寄せた。
「大丈夫よ。俊ちゃんは強いもの」
自分なら…自分の身に起きた事なら、きっと絶望して自殺を図ったかもしれない。でも、俊介は気丈に振る舞っている。
少なくとも、磯島を追い込むまではその姿勢を貫こうとしている。
誰だって強くはいられない時がある。
そんな時こそ踏ん張ろうとする俊介を、誇りに思った───。
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