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翌日───
署に連れてこられた俊介は、紗代と合流した。
紗代は俊介を見て、ニコニコとほほ笑む。
「なに?」
訊くと、頬を赤らめながら俯いてしまった。
それでも、照れながらなんとか話をしようとする。
「兄がいるなんて…想像したことも無かった。だから、嬉しくて……」
まつげで隠れた瞳が、わずかに煌いて見えるのは泣いているからだろうか。
「…俺には姉がいる。検査の結果が出ても、あの人が俺の姉である事は変わらない」
どんなに父親を憎く思っていても、母親を恨んでいても、円華だけはいつだって姉でいてくれた。
頼りにならなくて、泣き虫で打たれ弱くても、どんな時でも姉として俊介を守り、愛してくれた。
そんな事を言ったら、紗代はまた嬉しそうに笑う。
「お兄ちゃんは愛されてたのね」
そう訊かれると、よく分からない。
姉弟の絆はあると信じているけど、それを愛というのか…ただ当たり前に存在するモノを、自分で説明するのは難しい。
「あなたにもいたでしょ?妹」
佳奈の事を訊いてみると、紗代は目を伏せた。
「仲は…そんなに良くなかったから」
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