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不意にテレビのチャンネル変えた優衣香が「あっ」と、声を上げると、円華と英彦も振り返る。
テレビに映っていたのは、噂の磯島議員だ。
昨日、翔に隠し子の存在を追及され、次女の逮捕まで暴露されていた。
画面上には『疑惑の磯島議員を徹底取材』という文字が躍っている。
カメラを向けられた磯島は、それを手で払いながら不機嫌そうな顔をして車へと向かっていた。
「だから、息子なんていないって。いいからカメラやめろよ」
何度もそう言いながら手でカメラのレンズを塞ぐ。
「では、娘さんの逮捕の事はご存じだったんですよね?どうして逮捕されたんですか?」
記者に訊かれると、磯島は辿り着いた自分の車の後部座席に乗り込み、強引に扉を閉めた。
運転席に乗った秘書らしき人が車を発進させると、人がいるにも関わらず、アクセルを踏んで駐車場を出て行く姿がテレビに映る。
「札幌では有名な方なんですかね?磯島議員」
アナウンサーがコメンテーターに訊くと、その人は苦笑いを浮かべて首を傾げる。
「有名とは言えないですけどね。まあ、議員やって長いみたいですよ」
本人が思っているよりその権力は小さいもののようだ。
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