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真理亜が、嬉々として上がってくる。
加奈子は、これ以上ないくらい緊張していた。
昨日祥真が言った罪悪感という説が正しいなら、真理亜には加奈子の姿が見えるはずだ。
こそこそ隠れるつもりはなかった。
玄関に向かう辰雄に、加奈子もついていった。
「辰雄くん、会いたかった!」
ドアが開くと、真理亜はいきなり辰雄の首に腕を巻きつけて抱きついた。
辰雄は一瞬戸惑ったもののすぐにそれを受け入れて、腰に手を回す。
「……俺も会いたかった」
加奈子が数回も聞いたことがない熱のこもった声だった。
加奈子は、それを辰雄の後ろから見ていた。
辰雄の肩越しに、真理亜が廊下を見る。
その場に佇んでいた加奈子に一瞬焦点が合った、ような気がした。
けれど、真理亜はなんの反応も見せず、腕をといて辰雄と間近で向かい合う。
「急にごめんね。困らせちゃった?」
「そりゃ、ここは、加奈子と住んでる家だし」
歯切れ悪く言う辰雄に、真理亜は眉を下げて瞳を潤ませる。
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