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「ねえ、これ辰雄くんが作ったの?食べてもいい?」
テーブルの上の炒飯を見つけた真理亜が、楽しげに辰雄を振り向く。
「ああ、……うん、いいよ」
辰雄はほとんど躊躇わずに頷いた。
加奈子は、弱々しい声で「まって」と制止をかける。
その声は届かない。
温め直した炒飯のラップを真理亜が剥がす。
「待って。やめてよ。それは辰雄が私に作ってくれたものなの」
這うようにしてテーブルに近づいて、真理亜の腕を力なく引っ張る。
真理亜は意に介さず、「いただきます」と手を合わせた。
「やめて。それは私のだから、とらないで」
真理亜のスプーンが炒飯を掬おうとしたした瞬間、加奈子は皿を叩き落とした。
「……っきゃ」
がしゃん、と皿が落ちた。
炒飯がキッチンの下へ無残に広がる。
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