俺と親父

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 昔の俺は、わざと親父に反抗して、顔や首や、目に見えるところを殴らせようとした。    そうすれば、学校で教師が不審がってくれるかもしれない。児童相談所や警察に連絡が行って、親父が逮捕されてくれれば、俺は暴力から解放される。  でも、親父は目につくところに傷を負わせるなんてヘマはしなかった。  親父には借金がある。  そのせいで見張りがつけられていて、俺が自分で警察へ逃げ込むなんて事もできなかった。  家の中には、各部屋に一つずつ、隠しカメラと盗聴器が仕掛けられている。  長年そんな状態だと、どこにそれがあるのかまで簡単に調べられるようになる…にも関わらず、外してしまう事はできない。  例え外しても、留守中に侵入され再度仕掛けられるだけで、おまけに「どうして外した」と殴られるのだから、何の得もない。  だから、いつも誰かに見られていると分かった上で生活するしかない。  風呂でもトイレでも、隠し事なんか一切できないように常に見張られているのだ。  そんな中で、親父はしょちゅう俺に手を上げる。  少しでも何かが気に入らないと、殴られ、蹴られた。  辛いのは、鳩尾への一発だ。しばらく息もできない。  必死に息を吸おうとして、吸えなくて喘ぐ。気絶した事もある。
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