俺と親父

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 今日は雨が酷い。  いつもは雨でも夜間工事をするけれど、今日は酷いから、工事も中止になった。 「ただいま…」 「遅ぇぞてめえ! さっさと飯作れ!」  ずぶ濡れになって帰ってきた俺に、親父はタオルを投げつけてそう怒鳴った。 「てめえ、これだけしか買って来なかったのか?! ふざけやがって、また殴られてえのか! このドM野郎!」  ビールが二本入ったコンビニ袋を俺の手からむしり取った親父は、そう言って俺の尻を蹴った。以前に比べて、明らかに弱々しい蹴りだ。  もともと細い親父は、さらにその細さを際立たせるように痩せ、顔色も悪い。  親父は寝ている事が増えた。それなのに酒はやめない。だから俺は「金がない」と言って買う量を減らすようになった。  自分がろくに働けなくなった分、収入が減るのも当然だから、親父はどうにかそれで納得した。  が、こうして酔ってしまうと、抑えがきかなってしまう。
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