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「もっと買って来い!」
「飯遅くなってもいいならな」
そう返すと、親父はぐっと言葉に詰まって腕を振り上げる。
返す言葉がないと手を上げるのは、昔からの癖だ。
以前と違うのは、その手が俺には当たらないという事。
今も、酔った足元がもつれて、腕を振りかぶったまま転びそうになったから、とっさに体を支えた。
「こんなに酔ってんだから、我慢しろよ」
「うるせぇっ…」
「すぐに飯作るから、それ食ったら寝ろよ」
「ガキが生意気言いやがってっ。冷てぇんだよ、手ぇ放せ!」
親父は俺の手から逃れると、ふらつく足で短い廊下を歩き、奥へと向かう。
その後ろ姿があまりにも頼りなくて、俺は親父の肩を背後から掴むと、強引に体を抱き上げた。
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