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俺と親父
「酒買って来い!」
怒鳴り声と共に、床にビール缶を叩きつける音が響く。
「さっさと行けこの野郎が!」
尻を思いっ切り蹴りつけられた。
親父の酒癖の悪さは、昔からだ。妻である母親は、とっくの昔に逃げ出した。息子の俺を置いて。
もう十年も前の話だ。
ひどいとか薄情だとか、思って恨んだ事もある。
どうして俺を連れて行ってくれなかったのか。どうして、親父の元に置いて行ったのか…。
その時は、どうしても分からなかった。
でも、今なら分かる。
母親は、恐れていたんだ。
息子の俺が、いつか親父のようになり、再び自分を傷つける事を。
成長と共に、俺はその事に気がついた。
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