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──そう言えば、賭けの結果はどうなったのか。
アリカはあの火を消しながら起きた訳だ。
端から見れば、きっとドローなのだろう。
「──あの賭けは」
青白い煙が金色の髪をなぞる。
「お前の勝ちだ」
鬼は黒い髪に隠れた耳元へ向けてぼうっと呟いた。
鬼に寄り掛かったメイドは身を震わせて膝を折り曲げる。
「ドローでしょ、あんなの」
「だからさ
賭けにならなかった、それなら提案者の敗けだ」
「勝手な理屈」
鬼はふっと微笑む。
メイドのゆっくりした吐息は止まり、パッと深く呼吸する。
「もうどっちだって良いさ
私にとっちゃ勝ったのはお前
好きにすりゃ良い」
「本当に良いのね?」
「二度は言わねぇ」
──それじゃあ
スッと伸ばされたメイドの腕、白く、細い指先が鬼の頬を撫でる。
「その日は、ここに居たいわ」
「──高く付くぜ?」
「知ってる」
見知った天井、甘く青い香りに、煙が混じる。
白くぼんやりとした視界は息苦しいが心地良い。
彼女には、その愛おしいそこが──
楽園なのだ。
夏の終わり、最後の夏休み。
カムバック・トゥ・サマーバケーション。
その日、彼女らの夏休みは確かに帰ってくる事となった。
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