4人が本棚に入れています
本棚に追加
──パタリと扉は閉まる。
嵐が過ぎ去った様に静けさを取り戻した部屋で、二人は同時に溜め息を吐いた。
「……アリカだったら、ああ言う奴に惚れるのかい?」
「さぁね
でも、巳琴さんが男だとしても、多分無理だと思う」
煙管から上がる紫煙が揺れる。
火種を山へと落として、屑葉の山がまた火山になる。
アリカは煙管を机に置いてベットに座ると、両手で頬杖を突いてじっとメイルの方へと視線を向けた。
「あぁ言うのは趣味じゃないのよね、私」
「ああ言うの、と言うと
どう言うのだい?」
「……メイル、私以上に察しが悪いってのはちょっと問題だと思うわ」
アリカの溜め息混じりな返答に、メイルは唇を尖らせ、そのどこか暗い影を落とした様な瞳に視線を突き刺す。
メイルは本を机に置き、ふわりと宙に浮いて羽根が漂う様にアリカの隣へと座った。
「なんだい、そのらしくもなく意味深な言い方は?
そう言う風に勿体ぶってるのは、手前、好きじゃないんだが?」
「そう見える?」
「そう見えるさ」
メイルが自信ありげに応えると、アリカは両手を枕にして上半身ベッドへと投げた。
彼女はぼーっと天井を眺め、しばらくして、自身へ視線を向けたままのメイルと目を合わせる。
「フィリィさんの顔、見た?」
「フィリィの顔かい?
そりゃもちろん
でも、いつもの仏頂面じゃないか」
「……笑ってたわ
いや、仏頂面だったけど、そう見えたのよ、私には」
アリカはフフッと笑って起き上がり、隣に座るメイルの頬をつついた。
「ちょ、何さアリカ!」
「いーえ
分かってない様だから教えてあげるけど──」
立ち上がる。
スッキリした面持ちのアリカはメイルの前に立ち、机に軽く腰掛けて彼女の不思議そうにしている幼顔を見下ろした。
「あれは、女の顔──
だから、巳琴さんが男だとしても手を出したくない
って、言ったのよ」
アリカはしたり顔でメイルの鼻を指先で突いた
最初のコメントを投稿しよう!