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「ただいま。」
帰ってきた彼に、思わず口走っていた。
「ねぇ、別れよっか」
そんな言葉が出るなんて、自分でもビックリした。
ベッドの下から出てきた袋や、洗面台の下から出てきた袋を差し出し、
「これなに?」って問い詰めてもいいはず。
わたしがいながら、なんで知らない女を家に入れてるの?って言いながら、泣きわめいてもいいはず。
なのに、そんな感情はおくびにも出さず、出てきた言葉は冷静だった。
「なんで?
なんでそんなこと言うの?
なんかあった?」
「・・・・・・・」
「好きな男ができたのか?」
「・・・・・
それは、こっちのセリフでしょ」
バレてないって思っているのか。
わたしはわたしでキープしておいて、彼女とも付き合おうと思っているのか。
そんな都合のいい男だったのか・・・
「なんか、誤解してないか?」
わたしが、袋を差し出すと、これからいいわけが始まるのかな
どんないいわけも聞きたくない。
隠してあったっていう事実が、嫌なんだもん。
「もう、疲れちゃったよ。」
それだけ言って、わたしは帰り支度をはじめた。
「なんだよ、それ。
ちゃんと言ってくれよ」
靴をはくわたしの後ろ姿に言葉を投げかける彼。
わたしは振り返って
「いいよ、自由にしてあげる」
そう言って家を飛び出した。
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