last episode 夢のカケラ

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個室の中で、流星はベッドに上半身を起こしてベッドの背もたれに寄り掛かっていた。そして、ずっと窓の外を眺めている。由里は、唇を噛み締めて、グッと拳を握りしめた。 「流星…。私は…」 「由里。ごめんな」 由里の言葉を遮って、流星がそう言った。由里は顔を上げて流星を見つめると、流星はゆっくりと顔を由里の方に向けると、穏やかな優しい眼差しで由里を見つめた。 「俺、由里のことほんとうに愛してたよ…。今でも、愛してる。出会ってすぐに、君に惹かれた。明るくて優しくて、いつも楽しそうに笑ってて。俺は友達もいないし、結構自己中だからね。こんな俺のことなんか、誰も好きにならないと思って諦めてた。でも、由里だけは違ったんだ。俺のことを理解してくれたし、いつも俺のことを見ていてくれた。戸川のことを好きだってことは知ってたけど、諦めようと必死に泣くのを堪えてて、俺はそんな由里を世界で一番幸せにしたいと思ったんだ。だから、ダメ元でプロポーズしたら、まさかOKしてくれると思わなくて、ビックリした。ほんとに、嬉しかったんだ。父親と暮らしたいとか言われたって、なんの苦にもならなかった。由里と一緒にいられるなら。本当に、好きだったよ。だから、もう苦しめたくない…。戸川のことも、こんなことになるなんて…。傷つけるつもりなんか、なかった。謝っといて欲しい。もう、潔く、諦める。今度こそ。…ごめん。酷い事ばかり言って、ごめん」 流星の謝罪の言葉を聞くと、由里はたまらなく泣き出してしまった。胸が苦しくて、辛かった。そして、思わず駆け出して流星をギュッと強く抱きしめた。
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