last episode 夢のカケラ

17/26
前へ
/119ページ
次へ
芹那は、その日帰ってこなかった。電話もメールも、LINEも来ない。 俺は玄関の内側で、壁にもたれかかって座り込んだ。頭を抱えて、泣きたくて膝に顔を埋めた。 芹那はきっと、由里さんの言葉を、気持ちを、受け入れるだろう。優しいから。戸川さんのそばにいることを、選ぶと思う。 それで、いい。 それでも、いいんだ。 芹那が、幸せになってくれるなら。 それで、いいんだ……。 なのに、なんでこんなに涙が出るんだろう。 頭では分かっているのに、納得できていないんだ。 芹那との幸せの日々を過ごしてしまったから、これから1人になると思うと、体が引きちぎられるような痛みが、全身を襲う。 あの笑顔を、他の誰かに取られるのか? それで、本当にいいのか? ドクン。 心臓が、一瞬高鳴った。 そこに、スマホの着信音が響いて、俺は我に返った。スマホをポケットから取り出すと、電話をかけてきたのは滋だった。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

418人が本棚に入れています
本棚に追加