last episode 夢のカケラ

19/26
前へ
/119ページ
次へ
二人の、縁。 芹那の笑顔。見つめる時の、眼差し。真面目に料理をしている時。ドSな表情。抱きしめてる時…。キスする時。甘く妖艶な声。 いつの間にか、こんなに芹那が俺の中に、いる。どれを一つとっても、無くしたくないものばかりだ。 俺は、涙が止めどなく溢れてくると、うううっと唸ってしまった。 「分かったろ?無くしたくないもの。お前たちに縁があるなら、離れちゃだめだ。離したら、だめだ!俺は、芹那ちゃんを信じるぜ。あの子は、お前が思うよりきっと、ずっと、強い」 「…滋…。わりぃ。ありがとう」 俺は電話を切って立ち上がり、寝室に飛び込んでコートを持つと、急いで家を飛び出した。今すぐ、この気持ちを伝えたい。芹那に、行かないでくれと伝えたい。 手遅れになる前に。 流星さんや戸川先生に同情はしてもいいけど、その気持ちに流されないでほしい。愛しているから。どうか、俺を信じてついてきてほしい。思いの丈を伝えなくては…。 そう思って急いで病院に行ったけれど、芹那の姿はなかった。 実家にも寄ったけれど、帰ってきていない。 携帯で呼び出しても、出ない。 LINEを送っても、既読になるが、返信はない。 何処だ?! 一気に疲れた。身も、心も。 意気込んで出て行ったのに、まさか芹那に会えずじまいになるとは…! 俺はドッと疲れて家に帰ってきて、玄関のドアを開けると、 「あ、おかえりなさい」 と、芹那はキッチンから顔をひょこっと出して言うと、俺は驚いて芹那を真っ直ぐ見つめた。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

418人が本棚に入れています
本棚に追加