last episode 夢のカケラ

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「戸川さんと武井さんがこんな大事な時なのに、由里さんとあそこで話してた時ね、私、また全然違うことを考えてたの。もしあれが圭太だったらって思うと、怖かった。戸川さんたちには悪いけど、圭太のことしか考えられなかった。あんな事故に巻き込まれたりしたら、どうしようって。結婚してないと、先に呼ばれるのは家族の、祐さんとかでしょ?私のことは最後に呼ばれたりして、最後の場面に間に合わないで、圭太一人を先に死なせちゃうのかも、とか。もう、そんなことばかり考えてたら、頭がへんになりそうで、真っ直ぐ帰って圭太の顔を見る余裕なんかなかったの。これから先、圭太にもし何かあったら、私、生きていけない。何かあったら、真っ先に私が駆け寄りたい。圭太。だから、ずっと、あなたのそばにいさせてください」 芹那は涙をポロポロこぼしながらそう言うと、俺はたまらずに芹那を抱きしめた。 「俺にも少しはカッコつけさせてよ。それ、俺が言いたかったのに」 「え?」 「俺の方からもお願いするよ。芹那。結婚してください。もう、誰からも愛されてないなんてネガティブな考えは起こさないよ。君に愛されてる。みんなに、ちゃんと愛されてる。芹那。一生俺だけを愛して欲しい」 俺は芹那をキツく抱きしめながらそう言うと、芹那は声を上げて、泣き出した。
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