last episode 夢のカケラ

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駄目だ。芹那には、きっと一生叶わないな。 芹那に誘導されて、頂点まであっという間だ。 俺は、そんな芹那を見つめて微笑むと、芹那も汗ばんで光悦な笑みを浮かべたまま、俺を見つめて頬を両手で包み込んでくれた。 「愛してるわ。旦那様」 「旦那さま?!」 またもや、心臓を鷲掴みされた。俺、違う意味で早死にするのかも。なんて思って、何度も何度も頂点に上り詰めて、その夜は1ミリたりとも芹那から離れずに、眠った。 * 「由里さんの気持ちはよくわかるわ。でもね。私には圭太しかいないの。あなたがもし流星さんのところに行こうと、誰を選ぼうと、私には選択肢は一つだけ。どうしても戸川さんのところに行ってほしいなら、この命をあげる。でも、心だけは持っていけないの。だって、すでに圭太のものだもの。ねぇ、由里さん。あなたはいつもそうして、情に流されちゃうの。だから、結婚も間違えちゃったのよ。あなたの心は?幸せにしたいと心から願う人は、誰なの?」 談話室での会話の続きだ。芹那は由里の両手を握り締めてそう言うと、由里は驚いて芹那を見つめた。 「芹那さん。あなたが、羨ましい。私も、そうやって真っ直ぐ想いを貫く自信があればよかったのに」 由里はそう言って、涙が一筋頬にこぼれ落ちると、芹那は優しく微笑んでいた。 どうか、見失わないで。 情は、ただの情でしか、ない。 愛は、情とは違う。色も、形も、匂いも。 愛は、あなたの中にきっと、たった一つだけ、あるはずよ。
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