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幽霊城に着けば臭いが酷く、壁も穴ぼこなので黄色い声を門から響かせるも人の気配がいまいちピンとこない。幽霊城の名を馳せている所はココ以外に無いが、もしや間違えて来てしまったのかと自分の記憶を弄ったりして自分の存在もあやふやになってくる位までシーン……と、静かな森の奥地にある古城。動物や乞食エイリアンの気配の方が強くなるので、もう一度だけ叫び呼ぶ程が自分の身の危険とバイト代ほしさの限度だった。原付に寄り掛かって木々を見ながらアイアムはまたタバコに火を点け、コッチだって宅配の身だドンと構えてタバコを吸い終え、二度目のコールで出て来なければ時間っつーもんがあると腹を括った。緑の中でのタバコの味は最高ではあるが死ぬか生きるかの境に自分が居るのではバイト代なんてこの父の新作緑酒を独り占めするだけで良い位、おっかないのだ。
「……やっと、来てくれたんだな」
「はあ? もうコッチは帰ろうとしてましたよ、余りウチをなめないで欲しいですね」
「……すまん」という彼がずっと今まで顔を出さなかったのは、興奮のあまり鼻息荒くし身体を奮い立たせられていたからだった。涙が止まって黄色い声もちゃんと聴こえていたが、死ねるとなれば彼なりの正装をして少女に自分の愛銃を持たせ、一撃死。それで彼は綺麗に死ねると勘違いしていたのだが、まさかこんな少女が自分の心の持ち主だったとは予想外であって、ビックリされるだろうと一応の説明をしたく城の中で話をしたかった。
「いやココで良いでしょう。何故、私がもうこっからでも臭う城の中に……いや既にもう臭いんですよオジサン自体が!」
「臭い……か……ちゃんとおれなりの正装なんだが」
「臭いです。何かがすえたニオイで鼻が曲がりそうですよ、中なんかもっとでしょう」
「おれは……。失礼だがそのタバコの方が臭く感じる」
「ふうっ……そうですか! はい、緑酒の新作を届けてくれと、私はそういわれてココに来ましたから。はいちゃんと渡しました、はいサヨナラ!」
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