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古城の中に過去最強と呼ばれた男が独りぽつんと玉座に座って居た。城とは名ばかりで外壁はハチの巣みたいに穴だらけ、中は草花が生い茂り虫が蜜を吸いに来る廃墟であるが玉座の周りも荒れ放題で、酒瓶と戦友たちの遺品が乱雑に投げ捨てられているのでもはや美しく在るべき筈の廃墟とも呼ぶに相応しくない、それぞれが戦い抜いたという記念館と呼ぶにも余りに荒れ果て、ただしっかりあるものといえば雨漏りしない屋根だけである。
そんな中、ドロリと輝く玉座にぽつねんと座っている男はやつ当たりも呆れ果てて居てただボーッと、傷だらけで純金の筈なのに銅メッキみたく成ってしまった玉座に肘を掛け足を組んだり組み直したり、無精髭を撫でながらウ―ンと唸ったりと……その姿はまるで放心状態であるが、ただ一つを胸に待ち焦がれていた。それは自害以外の死の在り方だ。
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