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最強であるが故に彼は死ねないのだ。仲間の死に際の顔を見て、使いの老衰の死も見て来ながら、彼は世界上で最も強いが故に死ぬ事も、殺される事も出来なかった。もちろん最強の自分に付いている手で自害するのは容易い事だ。だが彼は自害など逃げだと嫌い、飲まず食わずして餓死を妥協した事もあったが、にっくき第三次世界大戦終戦から今まで喉が渇いたって腹を鳴らしたってジッと我慢してもなお生きているからして、彼は肉体や頭脳の他に臓器まで最強であると気付き、絶望した。どんなに頑張ったって足掻いたって首を切られたって頭を撃たれたって自らの手を以ってしなければ死ぬ事が出来ないのだ。
自らの手とは無論おてての事である。方法とは単純に其の最強の手で最強の身体を破壊する事だが、彼の弱点である『心』を破壊しなければそれは無理なのだ。心の居場所とはアタマの中に在ると誰もが良くそう例えるが、本当は違うのだ。心の在り処は自身の中に無く、専用の施設の中に在り、更に施設は他人の身体の中に存在する。だから人情という心が、昔は色濃くあったのだ。心とは、音楽や会話といった波長で動いたりするものだ。
だから彼にも誰かの心を持ち合わせていて、彼の心は誰かが持ち合わせ、揺らされたりするから感情が生まれる筈なのに、どうやら彼の心は余り動かない為、施設から落っこちたかしてしまっただろう。彼の心は唯一の弱点だ、踏まれたり盗まれて弄ばれたりすればどうなるか解らない。このまま死ぬのか生きようとするのかさえ、彼は判らないで居る。
「ぐっ……ぐっ……嗚呼、また来やがったか畜生!」
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