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彼は涙をこぼしてしまうので酒を飲む。彼の考えはこうだ。第三次世界大戦を起こした悪いエイリアンの誰かが自分の心を宇宙のどこかに持っていかれて成す術がない、そして宇宙ステーションは破壊され宇宙船の設計図も消えてしまい、地球はエイリアンと人類が和解し共存してしまったからこう酒を飲みながら我が城の中、ずうっと待つしかないと。
彼の弱点である心は、最強である身体と引き換えに最弱であるのだ。人見知りであり、世界共通語である地宙語を完璧に覚えた頭脳があっても、対面してしっかり会話する心、コミュニケーションが出来なければ攻撃できる最強の身体も同様に意味を成さないのだ。
「ああ、ああ……くっそ!」
彼が城を出る時といえば、酒を買いに行く時くらいだ。彼は残り少ない軍人の生き残りであるが故に金には困っていないのだが、緑色の血と赤色の血が混ざった今の人類から、あん時は凄かったんだけどねえ。落ちぶれたねえ等と小言をいわれながら酒をまとめ買いすると決まって、お前らにおれの何がわかる! と吐いてチップを置いて帰るのだから、そりゃあ無理もなく相手もチップ欲しさにワザと小言をいうのである。それで痛める所は何処かと問うならば絶対に心なのである。彼の心の持ち主は最寄りの緑酒屋(りょくしゅや)の中のひとりなのだ。名前はアイアムという少女で、アイアムは彼の事など心など露知らず酒を造る。
「パパ、量はコレくらい?」
「いや、もっとだ。こういうのは一気にやらないとダメなんだ、貸せ」
「うーん、やっぱり! 私もうやーめた!」
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