もう平和なんだからさあ

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「ふてくされるんじゃない、さっきのおじさんは一杯買ってくれただろ」 「ふてくされてるんじゃなくて、私に合ってないんだって! この仕事!」 「じゃあ何がしたい。いってみろ、ほら」 「…………もう良い!」  少女アイアムは不貞腐れては自分の部屋にこもる繰り返しの毎日。男女同権とかいって女も仕事を強いられる世の中と父の仕事を継がねばならない不平を感じて、耐え兼ねなくなってくる頃合いだが、それでも父の造る酒は好きだった。父は三代目で、ずっと男系であったが人為教信者の過激派の母モルランはアイアムを産んでからエイリアンとの対談中 『これがヒトなのだ!』と腹を切って血の色を見せ、子供が産めない身体になってしまい新聞等では賛否両論の大ニュースにはなったが父は余りに差別が過ぎると離婚したのだ。  アイアムはそんな人の中で産まれた今時めずらしい赤血人間であった。それでも、幾ら何でも勝手過ぎるとアイアムは飲みながら父を恨む。何故なら正に今の時代に差別されているのは真っ赤の血で、茶色い血が汚らしいと思うのは当然、ママは絶対ヒーローだと。 「やってる事と言ってる事が違うよ、ねー? ソレハアンタモ。……お互い様だよ」     
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