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「それを子供に言わせるか!」……酔いも調子付いて独り愚痴をする少女アイアムは其の言葉が妙に頭から離れずに居る。そう赤ん坊エイリアンの首を切りながら冷酷にいう様は子供には強過ぎていて、いつか、父が自分の首さえも切るのではないかと冷や冷やするも当然であるが、今やアイアムも人型ではないエイリアンなら切って緑色した溢れ出る血を見ても当たり前になっているのだから慣れとは恐ろしいものだ。ただ人間もエイリアンも血の臭いは等しく気持ち悪くて受け付けないものであるから逆に、臭いを克服すればもう父の側に立ってバイト代を貰える立場にある。それは、人間も平気な顔して殺せるという事実で、少女であったってアイアムの携える心は強いこと他ならない裏付けであるのだ。
心が何処に在っても成長しないワケが無い。特に思春期は揺れ動く成長が著しいもの。だから玉座に座って涙こぼしながら緑酒を飲む彼の考えは間違っているのだ、何事も動く事から始まり、終わり、出会っては別れ……その繰り返しで歴史というものが存在する。
歴史に名を刻んだ彼は、もうそんなの良いと待っているだけの彼は、本当に落ちぶれたものであり、何ら最強とはいえない甘ったれだが、彼にも思う所は幾つかある。一つは、もう誰一人として失いたくないという怯え。もう一つは、自分にも緑の血が少なからずも流れている……というのは第三次世界大戦中、彼の身体には一瞬だが寄生型エイリアンに侵入を許してしまった過去が一度だけあり、寄生型エイリアンとは種類様々ではあるが、その中には確かに人間をエイリアンに乗っ取られ変態し、仲間を装い味方陣地を食い荒らして一度に占拠する、蚊がウイルスを運ぶ様な一番に厄介なヤツが居た。彼は入って来た血管が通っている腕の表面を器用に削ぎ落としたが未だに懸念だけでは手遅れで、彼には緑色の血が通っていた。だから最強の男と呼ばれる迄になったのだが彼は知らずに居る。
「アイアム!」
「ひっく。はーい?」
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