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第5話 美術
校則破之助の担任と美術の先生は仲が良かった。いわゆるいい仲だ。
そのため、美術の時間は、校則破之助の存在を消すための策略が企てられる事が多い。
この日も、静物のデッサンの授業、皿に盛られた果物を描かせないために、破之助の前についたてが置かれた。
みんながデッサンに集中している時、ついたての向こうから破之助の声が聞こえてきた。
「めっちゃ、たわわだなあ。こぼれおちんばかり。今日はモデルになってくれてありがとう」
男子生徒の喉がごくりとなる。ついたての向こうが気になって仕方がない。
「すてきな裸だ。描きがいがあるわ」
その言葉で、我慢できなくなった男子生徒たちは立ち上がって、そそくさと移動する。
あのいつものアンドロイドかもしれないが、それでもいい。
裸を描きたい。裸を見たい。
押しかけたので、ついたてはバタンと倒れた。
そしてそこに、裸はあった。
特大の裸。
裸という字。立体的な明朝体。
「ここらへんがたわわ」
校則破之助はみんなの前で、裸の字の木の部分あたりを指差しながら呟いた。
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