第1話 校則

2/2
前へ
/6ページ
次へ
   教室の一番うしろ、いつでも出て行ける席に座っている男子生徒のひとりは、高校の校則を全部破ってた。  全部って、逆に難しいのだが、それを成し遂げていた。  まず、髪は床につくほど長く、しかも金髪。  制服は、改造しまくって、もはや2095年のパジャマのようになっている。  いやに着心地が良さそうな、もこもこ生地の柔らかい学ラン。でも、LEDが肩のあたりで星型でピカピカ光っている。  口紅を目の上に、アイシャドーを顎の先につけていた。このような突飛なものでも化粧は化粧なので校則はしっかり破っている。  不純異性交遊が禁止されているなか、どこかから連れ出したアンドロイドの受付お姉さんを、膝に座らせ、たまにキスをしたり、太股に手を滑らせてたりしている。授業中でも、だ。  廊下ばかりでなく、教室の中でも、走る走る。ルームランナーで走っている。  持ち込み禁止のお菓子も、がんがん持ってきていた。教室で、チョコレートフォンデュをしていた時もある。  彼は、校則破之助(こうそくやぶりのすけ)と言われていた。めっちゃ悪い奴である。  すぐに、退学になってもおかしくはない。  だが、彼を注意するものはいなかった。  幽霊に説教したり、退去させたりできないのと同じである。  いや、彼は生きているので幽霊ではないのだが、同じなのだ。  なぜなら、他の生徒も先生もみんなが幽霊だからだ。  彼だけ生きていたのだ。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加