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第2話 担任
校則破之助の姿は、皆に見えているし、会話もできる。
だが、担任や他の教師たちは、彼を無視していた。
まず、自分たちとは違って生きているし、勝手に生徒になっているし、風紀が乱れに乱れているし、かける言葉がないのだ。
毎日無視をしながら、授業をしている。
担任の塩田にとっては、まさに目の上のたんこぶ。反吐が出そうなほど校則破之助が嫌いだった。
お祓いしてでも出ていって欲しいのだが、お祓いしたら、自分が消えそうで躊躇している。
校則は全部破っているくせに、授業はかかさずくるのが鬱陶しい。
「ではこの問題解ける人~」
あてられないのを分かっているくせに、校則破之助は絶対に手をあげる。
膝上にのせている女性アンドロイドといちゃついているのも、本当に嫌だ。目をむけたくなくても、つい見てしまう。
何の恨みがあって、この学校に来ているのか。
本人とは話したくないが、知りはしたい。
放課後、女子生徒の1人、図書委員の吉川に聞いてみた。
「あいついるだろ、あれ」
「誰ですか?」
「あの、後ろの席に勝手に座っている……」
「校則破之助ですか?」
「そう、そいつ。なんでこの学校に来ているか知っているか?」
「よく分かりませんが、塩田先生の授業が好きだって言ってた時がありました」
「なんだって?」
一瞬、自分の動きが止まった。夕焼けが教室に入り込み、顔を照らした。
「なんか……あのくそ真面目な中にいると校則やぶってんなーって気がするとか言ってたような」
俺は吉川を帰らせた後、壁を叩いた。自分の皺が深くなった気がする。
(ゆるせん……あいつはただ校則を破りにきているだけなんだ……)
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