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黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒… 辺り一面、見渡す限りの黒。 他の色の介入を許さぬ闇色。 其処は底の知れぬ深い闇しか存在しない。 いや、正確には他の色が確認できないと言った方が的確なのかもしれない。 この闇の中には光というものが一切存在しない。 光がなければ他の色は認識できなくなる。 故に闇しか存在しないように見える場所と成るのだ。 だが、それはあくまで「そう見える」だけであり全く何もないわけではない。 ただ、あまりに暗すぎるせいで「そこに何があって、誰がいるか」などという疑問は、オカルトや心霊要素を好む物好きでない限りは抱かないだろうし、大体この場所は誰も好んで近付かない。 理由は単純に暗いから。 そこに居るだけで気分が落ちるような、何とも言い難い、負を背負ったような感覚を覚えてしまうからである。 しかしそれは(ひしお)には関係のない話だった。 醤はその暗闇の住人であり、主でもある。 どういう事か彼はこの場に居ながら「自分の肌」「髪の色」「足元の床の色」をしっかりと認識している。 だから此処に敢えて光を置く必要がない。 光がなくとも彼の眼には全てが見えており、寧ろ光などという眩しいものは邪魔でしかなかった。
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