とち狂った同居人

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ひたすらまっすぐ歩く。ちらほらと廃虚が見える。 更に奥に進むと一際大きな廃虚が見える。それが俺ととち狂った同居人の家だ。 壁は崩れ、鉄線やらなんやらが剥き出しになっていて人が住むようには到底見えない。 普通に住むとしたらここの手前にあった廃虚の方がよっぽど住みやすいだろう。 俺は改めてじっくりと見てから中に入る。 草が生えてたり崩れ落ちたコンクリの塊が転がったりしている。 それらを避けながら奥に進むと、床にドアが落ちてるように見える。 俺は周りに怪しい者がいないか気にかけてから中に降りる。 背を屈めて階段を降りるとまたドアがある。こっちのドアはちゃんと壁に埋まっている。 そのドアを開ければ、ふわりと紅茶の香りがした。 「おかえりマイケル」 艷やかな黒髪を腰まで伸ばした女性が片手にティーカップを持ち、もう片手を上げながらにこやかに出迎えてくれる。 俺はマイケルという名前でもなければ、外国人でもない。 「ただいま、キャロル」 適当に思い浮かんだ名前で呼んでやる。 「キャロル……うん、悪くない。ところでマイケル、仕事はどうだった?」 俺の職業を知りながら「今日学校どうだった?」みたいに聞いてくるこいつはなかなか肝が据わっている。 「楽勝だった。茂みに隠れて待ってたら車が来てそこからボディガード、ターゲット、ボディガードの順で降りてきた。3人降りてきたところでターゲットをバンッ。パニック状態な無能のボディガード達をバンバンッ。運転手は賢かったな、車から出てこなかった」 「なるほどなるほど、マイケルで正解だったね……。それで?」 キャロルはメモを取りながらブツブツ言う。念の為言っておくが、彼女も外国人ではない。 「バスに乗ったら頭の悪そうな今時の若造が次のバス停で乗ってきた、リズムを刻みながらな。イヤホンからの音漏れが酷かったよ。そいつは俺の隣に座って膝の上に茶封筒とカードを置いた」
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