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「カード!?どんなの?」
キャロルは目を輝かせる。
「こんなのだ」
俺はキャロルに二つ折りのカードを渡した。
「へぇ、すごいすごい!」
カードひとつでここまではしゃぐキャロルの思考回路は理解できない。
「ちなみにその後は特にない。強いて言うなら運転手に廃虚マニアのふりしたくらいか」
「なにしたの?」
どうやらこんな事でも興味を持つらしい。彼女の好奇心は底なしの天井知らずだ。
「この近くのバス停で降りようとしたら運転手が『ここら辺は廃虚しかないよ』なんていうからこの本出して廃虚歩くのが趣味だって言った」
俺はそう言って廃虚を歩くをキャロルに見せた。
「どれどれ?ぷっ……ふふ、はははっ!ぎゃーはははははっ!ひぃー、お、おかしっ、あっはははははっ!」
表紙を指さして狂ったように笑うとち狂った同居人。
「なにがおかしいんだ……」
「だ、だって廃虚の隠れ家に住んでる君が、ははっ、廃虚マニアなんてあっはは!」
キャロルは笑いながら話す。
「フリだって言っただろ……」
「それでもおかしいよ」
「付き合ってられん、風呂入る」
バカバカしくなって自室に着替えを取りに行き、それから風呂に入った。
「しっかしまぁ、廃墟の地下なんて考えられないな……」
これを作った大工たちはさぞかし苦労したことだろう。
先程まで話をしていたキャロルは本城美月という名前で小説家として活躍しているらしい。
だがとても風変わりで、普通のマンションやアパート、一戸建てに住むのに飽きて廃虚の地下に家を造らせた。
二年前、そうとは知らずにこの廃虚に身を潜めていたところ、例の落ちてるドアが開いて彼女が出てきた。それが出会い。
その時俺は仕事に使って血まみれのナイフを持っていたが、彼女は恐れるどころか俺を家に招き入れた。そして……。
『ねぇ、もしかして殺し屋?すごーい!本物初めて見たー!よかったら一緒にここに住もうよ!家賃は暗殺談で!もちろん所々変えるよ?ね、どう?』
彼女にそう言われて住み始めた。
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