果ての先に

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それを含め僕はとても変わったように思う。葵君といる時間は僕にとって糧のようなものになった。将来的には一人で生きていければいいと、思っていたのに。誰かと同じ時間を共有することがこんなにも尊ぶべきことだったなんて知らなかった。葵君は僕に未知の世界を与え続けてくれる。それがとても楽しい。 "僕達はやっぱり出会うべく出会ったような気がします" "そうだね。僕も葵君からメッセージが来た時は不思議な感覚だった。もし他の人から声がかかっていたとしても間違いなく葵君を選んでいたよ。" "僕達は欠けている。マイナスだ。そしてその欠けている部分がまるでジグソーパズルのように嵌まっている。その中で共に生きていることはとても奇妙な事なのだろうと思う。でもマイナスはかけるとプラスへと変わるよね。僕達は欠けたピースが合わさったことでプラスへと変化した。透明なものが色を持つように。それはこの上ない奇跡だと思ってる。そして出来ることならばこの奇跡的な中で少しでも長く生きていけたらと思うんだ。" "僕も、思います。湊さんは僕のこの上ないパートナーだと思っています。あの日巡りあった日に感じた衝撃は今でも忘れてはいません。もしかしたら僕は依存に近いのかもしれません。" "僕も依存に近いと思う。誰かと住めればそれでいいと思っていたのにね。相変わらず僕は臆病だから葵君でないとこの先住んでいくことさえ難しいと思っているんだ。この場所を無くす事を何よりも恐れている。" "共依存、でしょうか。僕達は依存と共存のあいだという脆い中にいるんだと思います。僕達の名前が緑と水のように。しかし、無くてはならないものと共に生きる。とても美しい生き方だとは思いませんか?" "そうだね。とても美しい生き方をしている。幸せな生き方だ。" お互い顔を見合わせて笑った。 僕達が辿り着いた先はこんなにも美しく尊いのだ。 どうか一秒でも長くこの時間が続きますように。それを願うしかなかった。
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