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 なにか冷たい、と思った次の瞬間、ぬるりとした感触があらぬところを襲ったからだ。 「ま、ちょ、え、なに……?」 「外痔ではないので中を見る。麻酔入りのジェルだ」  またタメ語だ。 「声……かけろよ……っ」  思わず叫んでしまったが「これからジェルを塗ります」なんて言われたら、逃げ出していたかもしれない。  だって、これ、あんまりにも、なあ?  そういうものじゃない。医療用だ。これはただの診察だ。そう言い聞かせるのに、ぬるりとした感触が潜り込んでくると、ぞくぞくとした。麻酔入りとはいうが、もの凄い違和感だ。 「中を見ないとなんともいえないから、肛門鏡をいれる」 「こ……っ!?」  こうもんきょう。  こんなに、なんだかわからないのになにをするかはわかってしまう言葉があるだろうか。  きつく閉じていた目をおそるおそる開くと、ベッドサイドにモニターが備え付けられていた。桃色に濡れた肉が映し出されている。 「ちゃんと綺麗だな……」  病状を吟味しているのだろうが、なにか思案するような声で呟かれると、別の意味に聞こえてしまう。もっさりしているが、声はいいのだ、むかつくことに。 「奥まで見たい。ちょっと起き上がって」
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