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子どもの頃、周りの大人は口を開けば可愛い可愛いと蓮を褒めそやした。
さすがアルファの子よね、と。
おまけに賢かった。小学校、中学校、そして大学と優秀な成績を収め、スクールカーストでは常に上位。就職も後進とはいえ一部上場企業に就職して、ひとり親で苦労してきた母のために駅直結のタワマンを購入したばかりだ。
順風満帆、思い通りにならないことなどない人生だった。
――はずなのに。
「……は?」
覇気のない熊みたいな外見にはまったくときめかないのに、それだけはどうしても気になってしまういい声が、もう一度くり返す。
「俺と、つき合え」
お れ と つ き あ え 。
正直、そんな言葉何度も言われてきた。そして何度断ってきたかもわからない。なのに今回はどうしたらいいかわからなかった。なんでも思い通りにしてきたこの俺が。
いや、こんなときうまく対応できる奴がいるなら教えて欲しい。
肛門科の診察台の上で砕石位――仰向けになって自分で足を押さえ、股をおっぴろげる格好だ――を取っている、こんなときに、だ。
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