1.川村強志

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 もしかするとまったく別の目的で、例えば広田とレイカがグルになってオレから金をせしめようとしているとか、そういう企みがないとも言い切れないが、数年同期社員として広田を見ている限り、そんなことを思いついたり行動したりできるような、賢いタイプではない。言動にはたびたび怒りを覚えるが、罪を犯すような人間ではないだろうと確信している。  そう思うことが、なんだか広田に好意的な目を向けているような、かばっているような気がしてはっと我に返った。しかしながら、そんな言い訳がすんなりと出てきてしまうほど、オレはこのレイカという小悪魔の手招きにのろのろと歩み寄っているのだ。  時間の経過と共に、画面越しではなく実際の姿を見てみたいと思うようになっているのをはっきりと自覚していた。もちろん、真奈美との生活に満足していないわけではない。だが、同じコーヒーでもモカとキリマンジャロがあるように、真奈美とは良さが違う女も味わってみたいと思うのは至って普通の感情なのではないだろうか。味わう、と言えばなんだか生々しいが、レイカとどうにかなりたいというのではない。直に話したら楽しいんじゃないか、という好奇心である。  肉体関係とか愛情が存在しない以上、異性と二人会ったところで何ら問題ない。これは言い訳でもなんでもなく、一般的にそういう解釈だろう。異性の友人という存在ならばそういう間柄になる。確かに、オレはレイカに好意は持っているかもしれないが、そもそも友人だって好意がある上で成立しているものなのだから。お茶を飲んで会話するだけなら、取引先の女性と打ち合わせで喫茶店に入るのと何も変わらないはずだ。打ち合わせと称して、弁護士と一緒にホテルに泊まった議員だって、あんなに堂々としているじゃないか。
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