1.川村強志

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 考えがまとまりきるかきらないかのうちに、先ほどのレイカのメールを開き「返信する」のボタンを押していた。 『お茶くらいだったら、時間なんとかなりますよ。今日の仕事終わってからとか、どうですか?』  一時間後に返ってきたメールは、今までのキャピキャピとした感じとはガラリと変わって、感嘆符や音符マークなど、感情を表すような装飾が一つもない文面だった。 『あたし、実はちょっと住まいが遠くて。川村さんがいるY市の方には、木曜日に営業担当で回ることになってます。  お時間取れそうなら、木曜日でいかがですか?』  もしかしたら、急な誘いに構えてしまったのかもと焦ったが、そうではないようで胸をなで下ろした。  それに、たまたま思いついたから「今日」と送っただけで、別に木曜でも構わない。むしろ真奈美にいきなり遅くなるという報告は申し訳ないから、そちらの方がかえって都合が良く、ありがたい。 『了解。では、明後日に』  かくしてオレとレイカは顔を合わせることになった。
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