1.川村強志

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「初めまして。レイカです!」  甘く漂う香りにうっとりと包まれる。視覚からも、鼻腔からも、使えるものはすべて使ってこちらを誘ってくる。  もしかしたら案外写真写りが良くないのかもしれない。仕草と表情が加わるだけで、こんなにもエロティックになるなんて嬉しい誤算だ。やはり、会ってみてよかった。  声はちょっと低めで、これがまたいい。こんなにも華やかで妖美な人、もし独身だったらオレはきっと……。そこまで思ったところで、ぐっと力強く飲み込んだ。 「なんかすみません。……紹介してもらっちゃって、ご迷惑じゃなかったですか?」  目の前のソーダを一口すすって、レイカが申し訳なさそうな表情を見せた。 「いや。別に彼氏になってくれってわけじゃないんだし。話し相手だし、大丈夫ですよ」  わざとらしい言い回しで下心はないとアピールしたあと、改めてその美貌を眺める。ストローを口にする、たったその一つの動作とってもいちいち官能的だ。少し厚みのある唇のせいだろう。つやめくグロスがまた艶めかしい。これを目にして、何とも思わない方が逆に失礼なのではないか。そんな奴は男としてどうかしている。 「そう言えば……奥様、とても素敵な人なんですってね」  予想外の「奥様」という言葉に、思わず心臓が跳ねる。広田から聞いたんだな。どこまでおしゃべりなんだ、アイツは。
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